媒染剤について
媒染剤について
アルミ媒染剤
アルミ媒洗としては、古くから明礬を使用してきましたが、現在の明礬は、硫酸アルミニウムカリウムという硫酸系の化学薬品です。 自然保護、環境問題等ありますので、硫酸系のものはなるべく使用しないようにしています。
椿灰
椿、沢蓋木、灰の木など、アルミの成分を含んでいる灰は、古くから利用されてきました。 椿灰を作るには、夏8月から9月までの期間に枝葉を切って生のまますぐに燃やします。
できるだけよく燃やして、白灰にします。 その灰は、保存しておくこともできます。
- 椿灰汁を作るには、8分目ほどの水を入れた容器に灰を入れ、よく撹拌してから一晩静置します。
- 灰を入れる量は、9分目くらいになるまで灰を入れます。
媒洗に使用するのは、その上澄み液です。
紫草や茜草でそめるときに先媒染や、また染め重ねるときの中媒染として使用します。 他のアルミ媒染にも利用しますが、椿にはアルカリ分も含まれていますので、色合いが違ってきます。
紬糸を椿灰汁で先媒染します。
酢酸アルミニウム
白色の粉末で水溶性の化学薬品です。 最初に少しの湯で溶いたほうが使いやすいです。 被染物の重量に対して2~10%を使用します。
塩化アルミニウム
無色の結晶で水またはお湯で溶かした上で媒染用の水に入れて使用します。 煮染めするときに限って使用しますが、先媒染の時や紫などのように高温にて煮染めできないものには、酸が残るので使用しないほうが良いと思います。
アルカリ媒染剤
灰汁や石灰など古くから使用されてきたものですが、発色、酸化剤です。
木灰
カマドや火鉢などの灰を利用したり、庭木などの剪定した枝葉を良く燃やして白灰にし、水に入れてよく撹拌し、一晩以上置いた上澄み液を使用します。
藁灰
糸の精錬に用いられてきました。 田んぼで切り藁にして燃やしてしまうので分けてもらうのが大変でしたが、こちらに引っ越してきてからは農家の人に稲刈りの際に藁として残してもらい、自分で束ねて乾燥させて利用することができるので嬉しいです。
しかし、この藁を束ねて運ぶのが大変です。 一反歩の藁分を束ねると、一日では束ねきれないんですよ。 とても疲れます。
藁を燃やした灰の、まだ火が赤く残っている黒灰のうちに水の中に入れて撹拌します。
藁灰は、軽いし、なかなか沈まないし、灰汁も黒い色をしているので、日数をかけてよく沈殿させてから使います。
灰汁を取った後の藁灰も畑にすきこんで再利用することができます。
PHを測ってから、木灰と同じように使います。 藁灰が自由に使えるようになったのに、最近はもっぱら野菜つくりの方に利用しております。
炭酸カリウム
藁灰に近いアルカリで、他の金属塩など含まないので、他の媒染料との併用や、木灰のPHが低い時に少し加えるときがあります。 紅花の色素を抽出する時に使用したり、乾材などを煎じる時に少し加えて色素の抽出を早くする時にも利用します。
生石灰(酸化カルシウム)
石灰から製したものは、鉄やマンガンなどを含んでいるので媒染するには良いようです。 雨水などが当たると発熱して危ないので気をつけたほうがよい。 以前、市原の工房の2階からの水漏れの時には、ちょっとびっくりしました。
木綿は、アルカリに強いため、特に重要な媒染剤かもしれません。
酸媒染
米酢などの穀物酢が使われてきました。 現在では、クエン酸や酢酸などが利用されていますが、なるべく米酢や梅酢などの自然の酢を利用した方がいいかも。
米酢
純米酢、穀物酢などが売られているので、それを使います。 濃度によって量を加減します。 ウコンを染める時の酸媒染に使ったり、紫や茜の染め液を取るときにも使ったりします。 鉄漿を作る時にも使います。
クエン酸
無色の結晶で粉末。 梅酢に近い酸で、紅花染で利用します。 また、錫酸ナトリウムを中和させるために使用します。最近利用するクエン酸は、食品用のクエン酸を購入し、飲料物を作ったり、ピーリングに利用したりもしています。
酢酸
無色の液体で、強烈な臭気があります。 染め液を作る時に水を加えたり、灰汁で煎出した煎汁を中和させるために使います。 私の場合は、柿渋を染める時に大いに利用しています。
鉄媒染
鉄分を含んだ泥を用いたり、鉄漿を製して使用していたようです。 硫酸第一鉄は、酸が残存して変色の原因になったり、生地を傷めるので使用しない方が良いと思います。 最近は、あまり鉄媒染をすることはめったにありません。
鉄漿(おはぐろ)
酢酸鉄のことで、成分は酢酸第一鉄といわれています。 黒や茶染めには欠かせない媒染剤です。
亡くなった祖母(信州)から聞いたところによると、作った蕎麦のゆで汁に古釘をいれて鉄漿を作り、くず繭を染めていたそうです。
鉄漿の簡単な作り方
米酢または酢酸(水で10倍に薄めた液)を容器(カメなど)に入れ、古釘を赤く熱して赤いうちに入れます。
2,3日で薄い黄緑の液体に変わり、使えるようになります。
古くなると、酸化して黒変するので、少しずつビンに詰めて使った方が良いと思います。
または、米酢500ccに500ccの水を加え、古釘500gを入れて熱し、30分間熱煎して液量を500ccにします。 ビンに液を布などで漉して移し栓をし保存します。 釘は、乾かして何回も使えます。
作った鉄漿はなるべく早めに使い切ります。 被染物に対して20%ぐらいの鉄漿に適当な量の水を加えて媒染剤を作ります。
木酢酸鉄
鉄漿に近い酢酸の一種です。 薄い黄色の液で臭気が強いです。 古くなると酸化して黒い液になり、時折、澱が溜まることもあります。
なるべく新しいものを使った方が良いでしょう。
錫媒染剤
塩化第一錫または、第二錫は、劇物なので個人で取り扱う際は使わないようにしましょう。
錫酸ナトリウム
錫酸ソーダとも言うけど、強いアルカリのためクエン酸で中和してから使います。 白い粉末で水溶性です。 錫は、熱によって、白濁するので、溶かす時も媒染液もすべて冷水を使用します。
浸し染めの時、被染物の重量の2%の錫酸ナトリウムと錫酸ナトリウムの3倍量のクエン酸(1対3)を別々の容器に入れ、冷水を入れて撹拌して溶かし、溶けたら一緒にして媒染用の水に入れます。
クロム媒染剤
銃クロム酸カリウムは、人にも環境にも影響があるようです。 酢酸クロムで媒染した後、最後に灰汁に浸すとある程度代用になるようです。
酢酸クロム
灰緑色の顆粒状の粉末で水溶性です。 溶けにくいので湯を用いた方がいいです。 材料屋さんでは、水溶性のものが売られています。
銅媒染剤
硫酸銅は、劇物で酸が残存しやすいです。 酢酸銅も劇物指定されました。黄色味を帯びた緑色の粉末で水溶性です。 材料屋さんで、銅原液が販売されています。
酸化剤
酸化を促進させるために使います。
過酸化水素水
過酸化水素35%が市販されています。 藍草の生葉染めの水色を染める場合、酸化を早めた方が色合いが良く、また後日の変色も防げるので、酸化を促進させるために使用します。
酸化のためには、被染物の重量の1%を水に入れ、その液に浸して酸化させます。