藍と藍染め
藍と藍染め
藍とは
藍・アイ(藍草)は、タデ科の植物で別名・蓼藍(たであい)ともいい、生薬名を藍葉(らんよう)、藍実(らんじつ)をいいます。
インドシナ南部の原産といわれ、我が国には飛鳥時代に中国より渡来し、広く栽培されて染色や薬用として大いに利用されていました。
藍草にもいろいろな種類があり栽培されたようですが、最終的に現代では蓼藍の小上粉の白、あるいは、赤が栽培されています。藍の色素の含有量の関係かもしれませんね。
藍の色素の生成
どうして緑色の蓼藍の葉っぱから、青い色素がでてくるのでしょうか。 蓼藍の葉の中には、インジカンという無色の物質が含まれており、葉が傷ついたり、枯れると、次のような変化が起こり、インジゴという青い色素ができます。
インジカン(無色)--<分解>-→ インドキシル(無色) --<酸化>-→ インジゴ(青色)
インジゴを生み出す種々の植物があり、その分類学上の種類もさまざまですが、いずれの藍植物も、インジゴの前駆体であるインジカン(無色の水溶性物質)を含有しています。
これが加水分解されてインドキシルに変化し、その2分子が空気酸化とともに結合することによって、青色のインジゴ色素を形成します。
藍植物の種類
世界にはインジゴを生み出す種々の植物があります。これらの植物が世界各地において古くから藍染めに用いられてきました。
古代エジプトの時代に染められていた藍は、藍はアイでも、インド藍のほうです。西暦前1512年に荒野でかかれたというモーセの出エジプト記の中では、幕屋の垂れ幕や聖なるところに関連した衣を描写する際、青、緋(ひ)、赤紫を挙げていますから、古代よりインド藍で染色がなされていたことが確認されています。
現代主な主流となっている藍の種類は、
- タデアイ(タデ科)学名:Polygonum tinctorium
- インド藍(マメ科、コマツナギ属)学名:Indigofera
- キアイ「木藍」 学名:Indigofera tinctoria
- ナンバンコマツナギ「アメリカキアイ」 学名:Indigofera suffruticosa
- 琉球藍 (キツネノマゴ科) 学名:Strobilanthes cusia
- 大青(ウォード、アブラナ科)学名:Isatis tinctoria
などがあります。
藍の色を染めるには、これらインジゴを生み出す種々の植物なくしては青の色を染めることはできませんでした。 聖書の記録によれば、紫貝だけでなく、青イガイという青を染める貝があるようですが、ほかに青色を染める植物といえば、クサギ(臭木)の紺色に熟した実くらいでしょうか。 なお、キショウブの根は青色を染めると文献に記されているのですが、今のところどうやっても茶系にしか染めることができません。それほど研究したいわけではありませんが、ハーブ辞典などでも青く染まると記されていますから、機会があればまた試したいと思っています。
ここでは、とにかく蓼藍を楽しんでいただきたいと思います。
藍建ての方法
藍建てとは、蓼藍の中に含まれているインヂゴチンという色素を加水分解醗酵させ、インヂゴに変化させ、水溶性に変えてやることにより、染まるようになります。
この液を作ることを「藍建てをする」と言います。
藍建ては、すくも又は藍玉を藍がめに入れ湯をそそぎ撹拌溶解し灰汁などアルカリ分を加えよく溶かしインヂゴチンをインヂゴに変化させ、糖分を添加すると液の表面の色が青みを帯びて来ます。
このときに消石灰を散布してやると液の表面は紫紺色となります。
藍染をするには、藍液の温度も重要で、一般的に28℃前後PHは11程度が最適です。
藍はとても繊細で、絶えず藍の色を出すための条件を保つ必要があります。 石灰や糖分を加えたり、また気温が下がれば温めたりもすることが重要で、まるで生き物のように気を配り愛情を持って建てた藍を管理する必要があります。
また、藍染をする為には水質もとても大切で、良質の地下水を利用したいものです。
藍建ての方法には還元剤の違いにより色々な方法があります。
古来よりは灰汁建て、灰汁の代わりに苛性ソーダを用いる醗酵建て、染物の色抜き剤ハイドロコンクを用いるハイドロ建てなどがあります。
ポリバケツなど小さな容器で藍建てをする場合、灰汁建て、醗酵建ては温度管理等、藍の調整をしなければ染まらないのでちょっと難しいですが、ハイドロ建ては温度が低くても染まりますので、簡単に藍染が楽しめます。
沈殿藍とスクモ藍
日本の藍の作り方は、すくも法と呼ばれ、ヨーロッパの藍もアブラナ科のウォードという植物から、これに似た方法で行われています。
それに対して、沖縄やインドでは、沈殿法という方法で藍が作られています。 沈殿法は、藍の植物を水につけ、その成分を水に抽出し、その水が発酵するのに伴って、インジカンが水に溶け出てくるとともにインドキシルに分解され、さらに空気を送り込むことで酸化させてインジゴを作るというものです。
できたインジゴは、植物の残渣からは分離され、沈殿させて取り出されます。 これを、インド藍の場合は乾燥させ固め、沖縄の場合は、泥藍(水分を含んだ泥状)で出荷されています。
すくも法が、植物の残渣をすべて残しており、インジゴ色素はその中に含まれているため、色素含有量がどうしても少なくなるのと違い、沈殿藍はインジゴ色素含量が高くなります。
ここでは誰でも簡単に助剤も使わないで楽しめる蓼藍の生葉染からぜひとも楽しんでいただきたいと思います。