藍を種から育て藍染めを楽しみ、身近な草木から自然の色を染める。藍や草木染めの染色の基礎を知り・学び、創る喜びを共に。

タデ藍の沈殿藍

タデ藍の沈殿藍


沈殿藍・泥藍とは?



藍を栽培して夏場に生葉染めをすると、季節に関係なく、自分の育てた藍で染めたい! しかも、木綿も染めたい!と思うようになります。

藍を生葉で染めるには、藍が育っている期間の夏場に限られており、しかも、生葉染めという方法は木綿にはよく染まりません。

そして、絹を染めた場合でも、濃紺色は無理であり、空色程度にしか染まりません。まあ、アルカリ処理した絹布を生葉で濃い色に染めることはできます。



季節に関係なく染めるためには、そして、木綿も染めるためには、藍の葉を発酵処理して「スクモ」をつくり、それを建てて染めるという方法が昔から行われてきました。

現在スクモ師も少なく、スクモを作るための技術も難しいのですが、何より根気が必要で、数ヶ月の期間が必要となります。



一方、昔からインドや、沖縄地方の熱帯、亜熱帯地域では、沈殿藍泥藍と呼ばれる手法で作られてきました。



この方法は、藍の生葉を水に浸け、葉に含まれている藍色素の配糖体(インジカン)と酵素とを溶かしだしますと、酵素が配糖体から糖を引き離す作用をしてくれます。これは、太陽熱を利用して促進させます。

さらに、石灰を加えてアルカリ性にしますと、空気との共同作用で藍色素(インジゴ)が生成します。 

生成した藍色素は水に溶けないために、静置しておくと沈殿します。 


したがって、上澄み液を静かに流し去ると、底に泥状の藍色素が溜まります。 

この状態のものを泥藍といい、そのまま染色に利用するか、あるいはまた、太陽熱で水分を蒸発させて乾燥固化し、サイコロ状にカットして製品にしますと、保存のきく藍染め用の染料が得られまる。

これを昔から藍錠(藍じょう)といいます。



日本の伝統的な藍染めに用いられてきた「スクモ藍」には、多量の有機物と微生物が含まれていますから、麦の糠(ふすま)などを微生物の栄養源として加え、木灰や石灰をアルカリ剤として加えて水中で発酵させると、「発酵建て」という「藍建て」となります。

このとき、藍色素の分子は還元作用を受けて水に溶け、藍色を失いますが、染めることが可能になります。

還元は酸化の反対ですから、このあと、アルカリを洗い去りながら空気で酸化すると、染料分子は元の藍色に戻って不溶性となり、藍染めとなります。



一方、泥藍は有機物が少なく、酵素の大部分と石灰の一部は上澄み液とともに流されていますから、「酵素建て」は無理で、建てるためには、アルカリを補うと共に、還元剤を添加する必要があります。 

もちろん、「スクモ藍」による「発酵建て」の際、染着濃度増加の目的で藍の染浴に加えることは可能で、それを「割建て」といいます。


 
「建て」た状態ですと木綿も染まりますが、生葉染めの方は、藍色素が配糖体(インジカン)のままの状態、あるいは、糖を分離した直後のインジカンとインジゴの中間体(インドキシル)の状態になっています。

このような状態では化学的な理由で木綿には染め着かないのです。



さて、泥藍・沈殿藍の製造に必要なアルカリ剤には、誰にでも容易に手に入る石灰があればよく、大した技術もいりません。 

製造期間もほぼ1週間もかかりません。



日本も地球温暖化の影響で夏は熱帯に近い気候ですから、熱帯、亜熱帯で行われる太陽熱利用の製藍法が有利になったともいえますね。

慣れないうちは、液のアルカリ度を調べるためのPH試験紙があるとよいと思いますが、慣れてくれば、必要ありません。

そのうち液の状況を見て判断できるようになります。

これも「慣れ」ということです。

それでは、蓼藍の生葉を使って泥藍をつくってみましょう。




蓼藍の生葉を使って泥藍を作る方法



25リットルバケツを利用します。

容器に刈り取って水洗いをしてゴミを落とした藍の葉を1キロほど入れます。 藍の茎葉がたっぷりとかぶるほどの水を入れます。

あとで攪拌するので、水を満杯にしないように。全部で20リットルになるくらいでいいです。



容器に藍の茎葉を入れ水を張る

実際の講習では、最低でも45リットルのポリにて、刈り取った藍の茎葉も適当で、体で覚えてもらっています。 自然のモノですから、使用する助剤などの分量でははかりきれないことがあるからです。一度体感したことを何度か試みたら、もう二度と染料屋さんで藍の染料を買う気にはなれないと思います。 



夏の炎天下に置いて、時折混ぜ返してください。最初は葉が浮き上がりますから、少し頻繁に混ぜ返すようにします。その後は、朝、昼、晩と一回ずつ混ぜ返します。

この浸けておく期間は、その時の気温にもよります。猛暑であれば、一昼夜でいい場合もあれば、2日間ほどかかる場合もあります。



その目安は、浸けた藍の生葉が緑色から色が抜けたような褐色になる頃合いです。バケツの中の液は、蛍光を帯びたような淡い緑系の色になっています。

夏季の高温期にあまり長く浸けすぎると、腐敗が進行し、ドブの排水のような悪臭を発します。でも心配しないでください。大体長くても2日ほどで、液の中の藍の葉っぱが褐色となりますから、夏季は2日間でできると考えてくださいね。



また、冷夏だともう少し日数を重ねなければならないこともあります。

さあ、色素の浸け出しが終わったら、葉を全て取り出します。ザルなどでクズの葉っぱも全て取り除いてください。

液には、藍色素の配糖体であるインジカンが溶け込んでおり、糖を分解する酵素も共存していますから、手早く作業してください。



消石灰を用意します。消石灰を計量カップに15グラム計ってください。

クズの葉っぱをきれいに取り除いたバケツの液の中に、少しづつ消石灰を加えます。そして、棒などでよく攪拌してください。

最初は、白っぽい泡ですが、消石灰を加えるたびに青く色付いてきます。そのうち、だんだん藍色の大きな泡となって匂いも変化してきます。

この匂いを覚えてください。この匂いが藍の発酵建てをするときの匂いです。さらに、消石灰を加えながら攪拌をし続けてください。すると、そのうち攪拌しても、泡が少なくなり、色も白っぽくなってきます。



液の色は黒っぽくなりますが、これは、液中でインジカンが水に溶けない藍色のインジゴに変わったためです。

だいたい消石灰は、15グラムで足りると思います。もし、葉っぱを取り出した時点で、腐敗がもっとすすんでいた場合は、消石灰をもうあと数グラム加える必要があります。



バケツから葉っぱを取りだした時点でPH値は4~5ぐらい、腐敗がもっとすすんでいればもう少し低いPH値になりますが、消石灰を入れ終わった時点では、PH値10~11になるはずです。

消石灰を加え始めてから、攪拌する時間は、約30分を目処として作業してください。

攪拌することによって、空気を液中に送り込みます。藍色素がインジゴになるために空気が必要なのです。空気の供給が不十分だと、良質の藍は得ることができません。ですから、ちょっと大変ですが、がんばって攪拌してくださいね。

攪拌作業が終わったら、その時の液の匂いを覚えておいてください。



そして、一晩そのまま静かに放置します。翌日、PH値が下がっていたら、腐敗臭がしますので、元の匂いになるまで消石灰を少しづつ加えて、PH10~11にします。

匂いが元のままであったら、そのバケツを傾けて、上澄み液を流し捨てます。そして、最終的に、藍色の沈殿が流れ出す寸前にバケツの傾斜を止めて、さらに、一晩静かに放置します。そして、またバケツを傾斜して、上澄み液を流し捨てます。



さらに、小さな別の洗面器などの容器にその藍の液を移し替えて、そのまま静かに放置し、容器を傾斜させて、上澄み液を捨てることを繰り返します。液量が極端に少なく泥状になったら、泥藍ができたことになります。



出来上がったタデ藍の泥藍・沈殿藍



この泥藍を丈夫なビニールの上などにこぼれないように流して、天日に曝して乾燥させます。これで、沈殿藍の完成です。




powered by HAIK 7.0.5
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional