減の証拠・ゲンノショウコ
減の証拠・ゲンノショウコ
減の証拠は昔から下痢止めの妙薬として利用されていた薬草です。夏の土用の丑の日のころになると、次から次へとこの花が咲きそろいます。
花は径1.5㎝ほど、花弁は5枚で東日本は白、西日本は紫紅色の可愛い花が咲きます。20年前に近くに群生していた減の証拠を移植したのですがどういうわけか花が紫紅色なんですよ。ですから我が家の減の証拠は、関西系のゲンノショウコということになりますね。
貝原益軒(かいばらえきけん)の「大和本草(やまとほんそう)」(1708年)では、下痢止めの効能があると記されていますが、我が国全域に定着していたわけではないようです。
寺島良案(てらしまりょうあん)の「和漢三才図絵(わかんさんさいずえ)」(1713年)では、葉はわずかに苦いとはあるけど、下痢をなおすことには触れていません。
小野欄山(おのらんざん)の「本草綱目啓蒙(ほんそうこうもくけいもう)」(1803年)で「根苗ともい粉末にして一味用いて痢疾を療するに効あり。故にゲンノショウコと言う。是救荒本草の牻牛児(ぼうぎゅうじ)の一種なり」。
救荒本草(きゅうこうほんぞう)とは飢饉に備え、野草を食料の足しにする方法の中国の書物(1424年)で、この本が日本に入って、ゲンノショウコが牻牛児に似ているため食用にしたら、たまたま下痢の人が治ったという話です。
下痢に効くのはタンニン(フロバタンニン)で、土用の丑の日のころがもっともタンニンが含まれるといわれています。
ですからそのころに減の証拠を全草取り、ゴミや汚れを水洗いして陰干しします。
- 1日量10gを水400㏄で半量になるまで煎じて服用すると、下痢止めや便通にもよいとされます。
- ゲンノショウコ風呂には、100gほど木綿袋に入れ風呂を立てて入ると湯冷めしにくく、渋り腹や冷え症、婦人の血の道にも効果があるとされますよ。
私は、主にヨモギも同量加えた風呂に入ることがありますが、足腰疲れたときには効果抜群です。
肝心な植物染料としての減の証拠の話を忘れてしまいそうでした。
土用の丑のころ採集し乾燥した減の証拠は、保存しておけば一年中いつでも利用可能です。染料植物を採集し乾燥保存させた場合は、主に気温が低くなる晩秋遅くから冬の寒いときがしまりのある色合いになります。
灰汁やアルミ、銅、鉄媒染すると、それぞれ黄土色から鼠色まで染めることができます。どちらかというと私は灰汁媒染が好きです。
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