梔子・クチナシ・山梔子(さんしし)
梔子・クチナシ・山梔子(さんしし)
クチナシは特に手入れをしなくてもこんもりとした樹形になり、6~7月頃つやのある濃緑葉の間から、純白のかぐわしい香りの花をつけます。オオスカシバという雅の幼虫さえつかなければ、本当に手間いらずで庭木としても気軽に栽培できます。
昔から厠の近くにあったクチナシが解体するときに掘り起こしてしまったようで無くなってしまったため、大株の実クチナシを入手したのですが、どんなに注意深く実を探しても一向に実がつかず、実なしであったことがわかりました。
その後、今度は小さな実クチナシを入手して、数年前より実がいくつかなるようになりました。でも、これらを集めてもとても染料として利用できる分量とはなりません。果たしていつのことになるやらと思っています。
クチナシの花の香りってすごく強いですよね。花の香りは130種の成分の混合物だそうで菅、香水の原料として抽出を試みたけど、精油収量は花の0.015~0.07%ほどだったようです。そんなに少ないのでは採算が取れるわけありませんよね。ですから、クチナシの香りと称するものは、香気成分を混ぜた調合香料を使うわけです。
そのクチナシの果実は晩秋に熟しますが、染色材料店で販売されているような細長いクチナシの実とは違います。ほとんど染料として販売されているのは、水梔子(すいしし)というやや品質が落ちた着色剤となります。
どうやら我が家のクチナシは、昔から、屋敷にあったのと同じコリンクチナシだったようです。黄赤色の色素は、クロシンで、サフランライスに用いるサフランと同じ色素です。
山梔子は、漢方では炎症を摂るのに用い、含まれているジェニポサイドが大腸でジェニピンに変わり、吸収されて胆汁分泌促進作用を示すことから、黄疸の治療にも応用されています。家族が多かった時は正月用の栗きんとんの色付けに利用したり、伯父が生存中は沢庵漬けの色付けにも利用しました。
今年は、このクチナシをもう一株ほど増やそうと思っています。ご近所で鳥の糞から発芽した種子が芽をだし20㎝ほどになっているのを発見したのでいただく約束をしています。
クチナシの胎座に包まれた種子をそのまままいても芽は出てきません。芽を出させるためには、黄赤色の胎座を水中でごしごし洗って取り除いてから蒔く必要があります。胎座にあるジェニポサイドという成分が発芽抑制物質として働き、春になってその胎座が腐り、ジェニポサイドがなくなってから順に芽を出すようです。
これも植物の自己防衛物質が働いているわけですが、その自己防衛物質が人間にとってたまたま何らかの効果があったため食用に用いられたり、伝承薬として用いられてきたわけですが、科学的にその効能が認められるようになったということですね。
現代使用されている多くのくすりのルーツは生薬、つまり、薬草、有用植物にあるということです。
梔子の種を蒔いて育ててみたい人はどうぞ試した見てくださいね。生薬ともなる有用植物はこれからの時代の貴重資産となります。